22時を過ぎてからの誘いは(2)

「こんばんは。」

 

「こんばんは。」

 

可愛い。

すぐにハグしてキスしたい。

 

こんな夜中にひょこひょこ家を訪ね、

すぐに抱きついたりしたら、印象悪いよな。軽い女だよな。

違う、そうだけど。

 

夜遅くでも飲み会に参加する、

バイタリティあふれるフットワークの軽い女の子。

いや、もうそれもあんまりいいイメージじゃないや。

 

ベッドに座って、ぎこちない会話をして。

 

「ナオくんはいつも忙しいね。」

呼んでおきながらパソコンで作業をし続ける。

 

「まあ、はい。」

 

なんで呼んだの。

 

そう言おうとしてやめた。

一応ビールも買ってきたのに。

「私、飲んじゃうね。」

 

「あ、うん、飲んでください。」

 

むかつく。

顔がタイプだから嫌いになれない。

 

その時だった、部屋のドアが開いた。

 

「お〜きてたんですね。」

 

ナオくんの親友、そして、昔のセフレ。

 

 

「なんだ、カズヤいるならビールもう一本買ってきたのに。」

 

平静を装いながら、ナオくんを見る。

 

「僕飲まないから、いいよ。」

 

そういうことじゃなくて。

 

「じゃ、乾杯!」

 

こいつは、何なの。

 

 

私が全部悪いんだ、それはわかっている。

 

カズヤくんはサークルの後輩で、

当時荒れていた私は、ついついこの強引なノリに飲まれてしまった。

 

その後何度か会ったけど、流石にまずいと思って、

1年前から体の関係はない。

 

それでもサークル仲間だし、よく顔は合わせていた。

数人で飲みに行くこともあった。

そして、紹介されたのがナオくんだった。

 

 

2人はほぼ毎日一緒にいる。らしい。

私がカズヤと色々あったことも、きっと全部知ってる。

 

その時点で、好きになったら泥沼になることなんてわかっていたのに。

 

「え、っていうか...」

 

「え、何すか?」

 

「いや、なんでもない。」

 

今日、どうやって寝るの...?

 

 

ナオくんは作業をしているから、カズヤと話す。

ずっと自慢話。

どうしてこの人はこんなに自信があるんだろうな。

 

「っていうか、俺いなかったらやってたでしょ。」

「ははは、どうだろうね。」

 

こいつはデリカシーがないなあ。

 

私がナオくんのこと好きなの知っててこういうことを言う。

2人でいつも私のことバカにしてるんでしょ。

って、いつも卑屈になってしまうから

何事にも積極的になれない。就活も上手くいかない。

 

 

ああ、なんで来たんだろ。

 

 

「僕、寝ます。」

「え、ああ、うん。」

 

マジでなんで呼んだんだよ。

 

「私も寝ようかな。」

 

「俺ナオと上で寝るから、寝袋で寝なよ。」

「マジかよ。」

 

カズヤのこの雑さはなんなの。

 

「いいけど...どこでも寝れるタイプだし。」

 

「嘘。一緒に寝ようよ。」

「やだよ、じゃあ私がナオくんと上で寝る。」

「そんなの、やるじゃん、2人。」

「この状況でやるわけないでしょ、ってかやらないよ。」

「わかったようるさいな。」

 

結局、私が上のベッドでナオくんと寝て、下でカズヤが寝袋。

 

え、なにこの状況。

ナオくん普通に寝てるし。

 

まあ、いいや。今日は疲れた。

ナオくんの寝顔を拝みながら眠れるだけ、幸せか。

 

うとうとしていたら、ナオくんの手が私の体に触れた。

びっくりして目を開けた。

 

「起きてたの?」

「いや、今起きた。」

「ごめん起こして。」

 

カズヤが動いてる音がして2人で目を見合わせる。

なんだ、この状況。

AVかよ。

 

「おやすみ」

小声でそう呟いて、抱きしめてくるこの人は何なの。

 

私も腕を回す。久々のこの体温が愛おしい。

 

私が悪い。全部悪い。どうなってもいいから。

せめて夜だけは、いい夢を見させてくれ。