失ってから気づく、だろうか

好きな子とはもう寝てしまった。

 

女の人は、やっちゃうと情が移り

男の人は、やっちゃうと終わり

 

そんなテンプレ通り。

 

最初は拒んでいたけど、

もう今は、会えば寝てしまう、ただのセフレだ。

 

ご飯を食べて、お酒を飲んで、映画を見て、セックスして。

 

私から誘えばだけど、ちょっとしたお出かけにも付き合ってくれる。

 

 

付き合ってるのと、さして変わらない。

外で手を繋がないのと、友達に彼の話をしないくらい。

つまり、公にできないだけ。

 

でも彼としたいことはできている、だから、それでいいと思ってた。

 

むしろ、メリットもあって、

 

他の男の子と、デートはもちろん、それ以上のことがあっても、何の問題もない。

 

イベントの度にプレゼントをあげなくたっていい。

 

義務がないのである。

 

なんて素晴らしい関係だ。

 

 

 

 

彼と寝た翌朝、

 

彼が早く出掛けるというので、朝早く起きた。

 

いつもは部屋のドアのところで別れるけど、

 

少し名残惜しい私は、コンビニにいくと言って、

駅まで見送った。

 

そんなに、話が合うわけでもない私たちは、

いつもお互いの話を話半分に聞きながら、ヘラヘラ笑う。

 

「僕の彼女が...」

 

突然耳がよくなったみたいに、

 

その言葉だけ、大きく、はっきり聞こえた。

 

そのあとは一気に聞こえなくなった。

 

 

彼女できたの。

 

平静を装って、相槌をうつ。

彼女って何、頭がグワングワンして、何も聞こえてないけど。

 

駅について、笑顔で別れる彼を

精一杯の笑顔で見送る。

 

回れ右をして、じわっと目頭が熱い。

 

「彼女できたど、昨日寝たってことは、この関係は今後も続けていいんだよな」

「じゃあ問題ないじゃん」

「今までもこれからもセフレ、私は何も損してない。」

 

古い慣習や倫理観に囚われない、現代的な合理的な選択をするのが私だ。

 

独占欲など、永遠に満たされない不安定な欲望は捨てたのだ。

 

 

 

本当は、どこかで、

彼も私しかいないと思ってた。

 

それを確認するために、クリスマスや誕生日にも、会ってた。

 

大切な日に、積極的に私に会っているわけじゃなくても、

私が特別だから会っているんじゃなくても、

他に特別な人はいないんでしょ。

 

 

欲を捨てたなんて、

そんなの、世を捨てる覚悟じゃないとできないんだから。

 

この胸の痛みと、目頭の熱さはなんだ。

 

 

そこで、目が覚めた。

 

まさかの夢オチに自分で笑ってしまう。

 

胸の痛みは残ったまま。

 

 

彼に電話をして、この夢のこと、この胸の痛みを話してみようか。

 

 

 

そんなことは頭をよぎっただけで

夢でよかった、とただ安堵するの。