誰とでもやるわけじゃないんだ(お酒2杯くらいじゃ)

 

合コンで知り合った医学部生の男の子。

別に学歴厨ではないけど、それくらいしか特徴がなかった。

 

というのも合コンでは、他の子とお話していたから、あまり話していなかった。

童顔で、優しそうな雰囲気があったのは覚えている。

 

後日LINEがきて、飲みに行くことになった。

 

新宿の美味しいチェーン店。

鳥貴族とか、〇〇農場系とか、チェーンの企業努力、ありがとう。

デートだとしても、無駄におしゃれで高い場所に挑戦するより全然いい。

コスパを考えた上でおしゃれなところならそっちがいいけど)

 

お話してみると、嫌いではない。

中身はまるでないけど、ワードセンスが好きだ。

「それは尊い」「わかりみが深い」

流行りの、ちょっとしたこだわり相槌、嫌いじゃない。

 

「そんな食べれないタイプなんだよね」

お腹が空いている上に、通常でも男性の平均くらい食べられる私は笑顔をつくった。

「そこまでお腹空いてないから大丈夫だよ。」

小さい嘘をつくのは得意だ。

 

私はビール、彼はハイボール

乾杯をして、ごくごく飲む私と、ちびちび飲む彼。

 

面白い雰囲気を醸し出した、薄っぺらい会話をつまみに、お酒が進む。

ああ、なんか噛み合わない。

違和感が止まらない。

 

違和感を楽しめる相手もいる、

好奇心をそそられるような、未知なる魅力を持っている人。

 

それではない。

掘り下げても私が心惹かれるものは出てこない気がする。

 

私だけ2杯目を頼む。

 

合コンの時の他のメンバーの話をしながら

会話は盛り上がらない。

 

ご飯も食べ終わり、1時間ちょっと。

お酒、もう一杯くらい飲みたいな。

 

「お酒もう一杯くらい飲む?」

「いや、いいや」

 

この会話の噛み合わなさだ。

帰りたくなったかな。

 

お会計をして。

半分くらい出したけど、1000円戻してくれた。

1500円弱の差か。お酒私の方が飲んだのに、申し訳ない。

 

「ごちそうさま」

東京女子図鑑で、「1000円くらいでごちそうさまって言いたくないでしょ。」

みたいなセリフがあったのを思い出す。

女のプライドとかじゃなくて。嫌味に聞こえそうで言いたくないな。

 

お店を出て、もう一軒くらい飲みたいなと思ったところで彼が言う。

「コンビニでお酒でも買って別荘的なところいきますか。」

 

ワードセンスが光っている。

ここは新宿。

 

新宿の別荘。

 

そんなの、一つしかないじゃないか。

 

お酒は2杯。飲み足りない。

「うーん、別荘じゃないところで飲みたいな。」

 

そう言いながら、近づく別荘。

「入ってこうよ。」

 

お酒が飲みたい。

「今日はやめておこうかな。」

 

お酒が飲みたいだけなんだ。

「今日は気分じゃない?」

 

今日はしたくないの、明日もしたくないの。

頭の中で泉まくらが流れる。

この人のために流したくはなかった。

 

「うん、また今度にしよう。」

また今度はきっとなくて、今すぐに違う人と飲みにいきたい。

 

Uターンをして、駅に向かった。

 

何線で帰るのか、最寄駅はどこか、

それくらいの情報量の会話を、薄く薄く伸ばしながら。

 

 

1500円弱おごってもらったことが気にかかった。

1500円弱で私を買えると思ったのか。

1500円弱じゃなかったら私は別荘に行ったのか。

 

そのことを気にかける自分も嫌いだった。

 

 

「じゃあね。」

 

 

新宿から渋谷に向かう間に、物悲しくて、

なんでも話せる友達をLINEの友達から探したけどいなかった。

 

 

ツイッターの裏垢にちょっとつぶやいて、

カップ焼きそばとウーロン茶割りを買って帰った。

 

 

私は不特定多数と関係を持ったという事実はあって、

ヤリマンとか、ビッチとか言われるタイプに入るらしい。

 

前の合コンでは、酔っ払って彼の友達にお持ち帰りされてしまったから

そのことが彼にも伝わって、そう思われたんだろう。

 

ヤリマンやビッチ、その中にもいろんなイメージやタイプがあると思うけど。

まず、私は、誰でもいいわけではないし、

セックスを、遊びや、スポーツと思っているわけでもなかった。

 

そういうセックスもあるんだろうけど、

私は違っていて、完全にコミュニケーションなのだった。

 

 

 

 

ヤリマン、ビッチという言葉でくくって、

その社会的なイメージを私に、私たちに重ねるから、

どちらも不幸になるんだ。

 

 

酔っ払ったら、よくわからなくなっちゃうけど。