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同期トガり男子

新年早々、っていつまで言っていいのかな。

 

今夜も当たり前のように男の子と2人。

私は本当に女友達がいない。

 

デートと呼んだら差し支えがある、いやまあないけど。

な会をする男の子が、ざっと10人くらいいて、

だから毎日のように飲んでいて、友達がたくさんいる気持ちになっている。

それって友達なの、とか考え出すと涙が出るからやめよう。

 

今夜の男の子は、大学に入学して、

すぐにサークルで仲良くなった、

同期のトガり男子。

2留の末に大学を辞め、今は起業している。

 

彼とは、大正モダン風の、モツ煮の美味しいお店で待ち合わせ。

いつの間にか髭を生やしている。

そして長く伸ばした髪を後ろでくくっている。

何者かのオーラ。誰やねんお前は。

 

私は就活に向け、黒髪ロングとなり、服装もモノトーン。

でも、大学入学当時の私は、

自意識過剰トガりクソ雑魚野郎で、

一瞬にしてそれが見て取れるファッションをしていた。

 

髪の毛は金髪ショート、いつも下北で買った変なピアスをつけて、

お気に入りのスニーカーは海外から輸入したド派手な黄色だった。

 

それなりにおしゃれだったとは思う。もう無理、いろいろと厳しい。

 

そんな当時の私を好きになってくれたのが彼だった。

しかし、「好きの入り」が、その私だったから、

たくさんの歪みが生まれてしまった。

 

とりあえず生2つをもらい、料理を頼む段になって、

「お雑煮ありますよ」と店員さんが声をかけてくれた。

テンションの上がる2人。あとで食べよう。

 

お正月だが、帰省をあえてズラした私たちは

あえてお正月を楽しむ感覚を共有していた。

彼は元日に凧揚げをしたらしい。あえてどころではない。

 

突拍子のない彼は、昔から私には手に負えなかった。

大学を裸足で歩き始めたり、図書館の屋上でバーベキューしたりしていた。

女性性を身につけると言って、ジェラピケのルームウェアを着てきたこともあった。最後はさすがにびっくりしたが、なんせ嘘。

 

彼は突拍子もなく、私には手に負えないわけだが、

彼自身は、自分の世界をコントロールできている。

彼にとっては、すべてが、あえて、なのだ。

 

たこさんウインナーがあった。

これをあえて頼む感覚、共有できる。

彼はその感覚が永遠に広がっている。 

 

彼はお金持ちになることが目標だ。

 

みんなが夢と現実とのギャップに打ちひしがれ、

大学入学当時の理想を少しずつ少しずつ、

自分も気づかないくらいに少しずつ少しずつ下げていく中、

 

彼はずっと自分の理想を保っていた。

それは完全に盲目的、というわけでもない。

彼は頭が良いし、バイタリティもある。

私なんかには手の届かないことを成し遂げる力があるように見える。

彼なりに勝算はあったのだろう。

 

あれから4年経った今でも、お金持ちという彼の理想はぶれていない。

 

生ビールを早々に飲み終わり、バイスサワーを頼む。

彼は飲んだことがないという。シソの風味だよ、というと

香りものが好きだから好きかもしれないとのこと。

  

彼はぶれない。そして彼の私に対する理想もぶれていない。

自意識の強さを背景に、自分ならではの道を歩み、

確固とした自分を持った個性的な子。

 

そんなことないのにな。

バイスサワーを飲みながら、バイスサワーを飲む彼の顔を見ながら思う。

 

本当は私だって、あの当時の自分が好きだったのかもしれない。

周りの目を気にせず、媚びず、自分の好きな洋服を着て。

 

私は早々に、理想追求チキンレースから降りたのだ。

 

すぐに手が届く幸せを理想に掲げて。

それでいい。バイスサワーとモツ煮が美味しい。

 

彼はきっと、あえて、私を好きでいてくれているのだろうな。

本当は全部知っている。私が取り繕いながら生きているのを。

そうだとして、彼は私に、何を見ているんだろう。

 

とかセンチメンタルに考えたところで、

新年の寂しさを紛らわすためだけの飲み会をエモに変換するのはやめような。

 

結局は人間。そんな高尚な考えで人を好きになるわけない悲しい人間。

怪訝な顔をされがちな彼を、私がただニコニコと彼を承認しまくるから

彼は私から離れがたいのだ。

 

キャバクラと一緒。ガールズバーと一緒。

それでいい。お雑煮が美味しい。

 

 

そんな彼が、

「やっぱお前は素敵だな」

え、素敵とか素で言えちゃうの。

 

自意識過剰トガり男の、素直な発言は

それが、あえて、であっても、

浸透力半端ない。

 

 

明日はユニクロの初売りに行かなきゃ。

そのあと、下北で変なピアスを買おう。