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とまらない食欲と。

弟が大学に合格した。

 

大好きな弟。本当に嬉しい。

 

そして就活にうまくいかない私の状況を、彼に報告できないのが悔しい。

 

パスタめっちゃ茹でる。

パスタめっちゃ茹でてる。

 

さっきご飯2杯食べたけど、

パスタめっちゃ茹でた。

 

弟が合格したのは、とりあえず第二志望。

 

私も、第一志望の業界は、ダメ元とはいえ、驚くほどバタバタ落とされてる。

しかし、第二志望の業界の選考は、とりあえず順調に進んでいる。

 

ここでしっかり内定をとって、弟に報告したい。

 

そしてパスタ食べるのやめたい。

 

パスタ美味い。

 

内定くれ。

 

内定出たら痩せるから。

 

内定くれ。

 

パスタ美味い。

前のバイトの先輩

杉並区に戻りたい。

 

 

前のバイトの先輩と高円寺で会った。

彼氏と別れる少し前だったから、半年ぶりだ。

 

一重の大きな目。落ち着いた声。気だるげな雰囲気。

 

出会ったのはバイト先の下北沢の小さなバーだった。

ちょっとしたギャラリーが併設してあって、

先輩はよくそこに写真を展示していた。

 

先輩は、そこそこ大きなコンテストで賞を撮るような、写真家だった。

今は小さな会社で事務仕事をしながら、写真を撮っている。

 

バイト先ではそこまで話さなかった。

私は髪型が自由で、家から近いという理由でそこで働いていたし、

先輩もギャラリーに展示してもらう代わりに働いていた。

特にバーで楽しく働こうなんてモチベーションはなかったこともあって、

二人ともバイト先では無口な方だった。

 

ある日、近所のお祭りで出店をすることになった。先輩と二人だった。

お祭りの雰囲気に流され、二人とも少し浮かれた気持ちだった。

 

「先輩の写真、いいですよね。」

「え、ありがとう。」

「なんか、ちょっと寂しい感じで。」

「それは褒め言葉なのかな。」

「めちゃくちゃ褒めてます。」

「あ、お客さん。」

 

お客さんをさばく合間合間に話した。

映画とか、漫画とか、意外と話しがあった。

2、3か月は一緒にバイトしてたはずなのに。

気づかなかった。こんな楽しく話せる相手が近くにいることに。

 

バイト終わったら、飲みいかない?」

「あ、そうですね。打ち上げですね。」

 

何が打ち上げだ、打ち上げるほどの仕事もしてない。

誘われるとは思わなくて、どぎまぎして、変なことを言ってしまった。

 

バイトが終わって、近くの大衆居酒屋に入った。

「いつもウイスキーばっか出してるけど、やっぱビールと日本酒だよね。」

「わかる!わかります!ウイスキーも好きだけど、やっぱりビールと日本酒。」

 

そのあとはウディ・アレンの話で盛り上がった。

ダメ男はいい。煮え切らない、どうしようもない男。 

 

半年ぶりに会った先輩は、ちょっと太っていた。

もともと心配になるくらい細かったから、むしろ肉付きが良くなって安心した。

 

今は高円寺に住んでいるらしい。

ヴィレヴァンで待ち合わせして、立ち飲み屋さんに移動。

 

「そういえば、こないだの先輩の展示、行ったんですよ。」

「え、連絡くれればよかったのに。」

「少ししかいられなかったから。呼び出すのも申し訳なくて。」

「そっか。でもありがとう。」

 

ビールで乾杯。おつまみは厚揚げと、ちくわの天ぷら。

壁には高円寺で開催されるイベントのビラがびっしり。

いいなあ。大衆的な雰囲気、大好き。

 

先輩と飲むときは、いつも大衆居酒屋。

おしゃれなところは、私たちには似合わない。

 

「あ、ごめん電話。」

「いいですよ、出て。」

「うん、部署の先輩だ、ちょっと出るね。」

 

もう、働いてるんだなあ。

 

「今デート中なんで無理ですよ。」

 

電話口で飲みに誘われているらしい。

デート、か。まあ、そうか。

 

「ごめんね。先輩いつも誘ってくるんだ。」

「いえいえ。なんか、ちゃんと社会に出てますね。」

 

フッと笑って、ちょっと悲しそうな顔をした。

 

ビールを飲み干し、糖質の気になる私はホッピーを頼んだ。

焼酎が異常に濃い。早々に酔っ払いそう。

 

「そういえば、見せたいものがあるんだけど、家こない?」

「え、ああ、何ですか見せたいものって。」

「写真、昔撮らせてもらったやつ、ちゃんと製本したんだ。」

 

 

あのお祭りの日から、だんだん仲良くなった。

 

「写真、撮らせてよ。」

そう言って先輩は、下北沢の家に私を呼んだ。

 

布団と、本棚しかないワンルーム

本棚は、カメラと、写真関連の本で埋め尽くされていた。

 

ファイダーごしに、先輩の視線を感じる。

「顔だけ、あっち向いて。」

カメラマンと被写体。不思議な関係だった。

 

夜まで撮影は続いた。お酒を飲みながら、はしゃぎながら撮った。

フィルムカメラだったから、どう映っているのか確認できなかった。

 

 

「あれ、3年前くらいじゃないですか?もう忘れてた。」

「そうだね。展示にも出してたけど、その写真以外もあるんだよ。」

 

そう、前に行った展示にも私の写真があった。

下着姿の写真だった。あの夜に、撮ったやつ。

 

「まあ、行こっか。」

「はい。」

 

先輩の声は、優しいのに、強い。その通りにしてしまう。

写真を撮られている時もそうだった。

 

 

高円寺の先輩の部屋は、前の部屋と雰囲気が同じだった。

布団と、本棚、それだけ。

 

「これ、製本したやつ。見て欲しかったんだ。」

 

寂しい写真。好きだ。

「懐かしい。私、金髪だ。」

「昔は金髪だったよね。今は就活スタイルか。」

 

時間が経つのは早い。

写真の中の私は、金髪なだけじゃなくて。

もっと危うい、荒削りな私らしさを持っていた。

 

何してんだろ。

就活のために黒髪にして、私の人生の大半を占める暗い経歴を隠して。

 

「なんか、見れてよかったです。」

 

私が考えていたことを、全部見透かしたように、

先輩は私の頭を撫でた。

 

「村田さんは、変わらないでほしいな。」

 

先輩は今でも、私を苗字にさん付けで呼ぶ。

 

「先輩も、変わらないでほしい。」

 

 

 

なんとなく僕たちは大人になるんだ

銀杏BOYZは正しい。きっと、変わりたくないけど、私たちは大人にはなる。

 

この関係も、先輩との寂しさを癒し合うこの関係も、

きっと大人になって、続けられなくなるんだろう。

 

それまでは、子供じみた、くだらないこの付き合いを。

みんな傷だらけ

自分ばかり傷ついていると思っていた。

 

体を許すことで、自分を犠牲に人を癒してるつもりだったんだ。

そのかわりに、私は一瞬だけ、孤独を忘れる。

男の人の性欲を処理し、抱きしめて安心をあげるための身体。

自分の存在意義の危うさに震える。

 

孤独な個体は、身を寄せ、お互いの弱い部分を見せ合って。

共感なんて、そんな暖かいものじゃなかった。

弱さは共鳴して、より大きくなる。

 

テレビに映る、田舎の幸せそうな家族を見ると、いつも驚く。

ちゃんと、幸せに生きれるんだ。

お金持ちじゃなくても、美人じゃなくても。

 

寂しかった。私たちはいつも。

理想と現実のギャップは人を孤独にする。

 

私はこんなものではないんだと、

周囲の人はわかってくれない。私はもっと上の存在なんだと。

 

でも、私が思う理想の人たちは、雲の上にいて、

本当は、今いる場所が私の実力で行けるギリギリの場所なのかと思いながら。

 

決して満足することも、努力することもなく。

 

今日も、付き合っていない、好きなのかどうかもわからない、彼と、

くすぐり合って笑いながら、体を交わして孤独をごまかす。

抱き合って眠ろうとするが、息苦しくなって、結局は背中を合わせて寝るの。

朝起きて、ベッドから出たら、まるで他人。

ハグもしない、キスもしない。 

そうして距離をとることで、期待させない。

 

それが、一番傷つかない方法だと思っていた。

人と寝た次の日は、疲れてしまって、夕方まで寝込む。

体が疲れてしまってるのではなくて、心がどうしようもなくクタクタなのだ。

 

孤独が、一瞬でも癒されるのは、人と抱き合っている時だけなんだ。

でも、それは麻薬のように、切れてしまうと心身はボロボロになる。

 

私と寝た翌日の彼のツイートは、少しメランコリーだ。

お互い、好きでもなんでもない。

孤独を必死でごまかそうとする度、少しずつすり減っていく。

すり減るところが無くなるまでそうして生きていくのかな。

 

いつか、田舎の幸せな家族みたいに、困難はあれど、

自分の現状に満足して、屈託なく笑えるんだろうか。

大学の元カレ

来世はお酒がない世界に行くんだ。

 

「今日空いてる?飯食べない?」

 

最後の期末レポートを提出し、心身ともにぐったりしていたところだった。

久々に元カレからの連絡。

別れてからも、友人のように仲良くしていたが、

ここ数ヶ月はぱったりと連絡が途切れていた。

 

「今日は疲れちゃって...家出れないからパス。」

 

「じゃあ、料理作ってやろうか?」

 

元カレを家に呼ぶのは色々と懸念がないこともない。

あれ、っていうか料理できたっけこの人。

 

しかし、コンビニに行く気も起きないこの疲労。

家に来て料理してくれる。ここから一歩も動かないで、料理が勝手に出てくる。

抗えぬ、魅力。

 

「それは是非お願いしたい。」

 

30分後、チャイムの音。レジ袋を右手に携えた彼が立っている。

「おー久しぶり。髪ボサボサかよ。」

 

大学に入ってすぐ、1年間付き合った後、別れた。

あまりに彼が居心地が良いので、私がダメになってしまった。

それが怖くて、私から別れを切り出した。

 

「料理、できたっけ?」

 

「数ヶ月でね、人は変わるのよ。」

 

「本当かよ。」

 

「いいから。パスタでいい?コンソメある?」

 

荷物を置いて、すぐ作業を始める彼。なかなか手際が良い。 

 

「なんで料理するようになったのよ?」

 

「あー。実は彼女できて。すげえわがままなの。」

 

未だに元カレに彼女ができると、心がぐずる。

まだかさぶたになりきってない、ぐずぐずの傷を刺激された感じ。

 

「それで、料理作れ、元カノと連絡は取るなでうるさくてさ。」

 

なるほど、数ヶ月前に会ったあの日からこの瞬間が繋がった。

 

「いいの?今、元カノの家きちゃってるけど。」

 

「もう別れたから無問題。」

 

呆れて別れたらしい。ちょっと嬉しい自分がおかしい。

 

いつの間にかいい匂い。ベーコンを焼いて、牛乳とコンソメを加えて。

クリームパスタだ。

 

「おお。ちゃんとしてる。」

 

ほうれん草とベーコンのクリームパスタ。見た目もきれい。

缶ビールを開けて、久しぶりの乾杯。

 

「いただきます。」

 

人の手料理を食べるの、久しぶり。そういえば実家もしばらく帰れていない。

 

「今日はイマイチだったな。」

 

「そんな、美味しいよ。私が作るのより全然。」

 

ありがとう、とぼそっと言って、パスタをかき込む。ちょっと照れている。

本当に、美味しい。ちょっと茹で過ぎたところが良い。家庭のパスタの味。

 

「ごちそうさま。」

 

洗い物は私がする。わかりやすい役割分担は良い。

居心地いい。疲れすらも心地よい。

 

洗い物を終えて、一緒にベランダに出て一服。

「なんか、俺たち夫婦みたい。」

 

よくもそんな恥ずかしいことを、さらっと。

 

 

「今日、泊まっていいよね?」

 

「まあ、そうなる気はしていたけど。何もしないよ。」

 

「それはわからないでしょ。」

 

 

寒い寒いとはしゃぎながら部屋に戻る。

その拍子に、肩が触れて、昔の感覚が一気に蘇る。

 

何だろう。もう友達になったと思ってたけど。

今日は何かが違う。疲れてるのかな。

 

テレビを見ながら、いつの間にか彼の手が私の肩を抱いている。

私は、抵抗する気も起きないほど疲れているのだろう。 

いいのかな。まあいいか。

 

「お前、やっぱいいな。美人はつまんねえからな。」

 

「褒められたのか貶されたのか。」

 

「彼氏できないの?」

 

「できてたら君を家に上げないよ。」

 

「じゃあ、付き合う?」

 

驚きと、でもどこか予定調和的なこの雰囲気。

別れてから、もう数年間そんな話にはならなかったじゃないか。

 

「よっぽど前の彼女に懲りたのね。」

 

「それもあるけど。やっぱり俺ら合うじゃん。」

 

 「そうだけど。もう少し遊んでたいでしょ、お互い。」

 

本心だった。彼といたら、落ち着いてしまうから。恋愛も何もかも。

 

「でもさ、遊びに理解あるじゃん。お互い。付き合ってても遊べるでしょ。」

 

なるほど、付き合いながらも、浮気を公認し合う。

彼以外にも関係を持つ。彼も、私以外にも関係を持つ。

このご時世言いにくいが、そういう形も私はいいと思う。

 

でも、それなら、別に、付き合う必要も感じない。

付き合って何が変わるんだろう。

付き合わないとキスやセックスをしない、というタイプではないのだお互い。

 

この人にとって、私にとって、付き合うって何なんだろう。

 

 

「まあまあ、今は別れたばかりで混乱してるのよ君は。」

 

適当にごまかして、日本酒を開ける。

家飲みはついつい飲みすぎる。

 

疲れとお酒。それが全て。

 

泥酔したふたりは、くだらないテレビでケタケタ笑った。 

記憶も曖昧なまま、一緒にベッドで寝た。

 

「俺は好きだよ、本当に。」

せめてもの理性を働かせ、背を向けていた私を

彼は後ろから抱きしめる。

 

キスをするのも、セックスをするのも簡単だ。

なのに、なぜキスをしたのか、なぜセックスをしたのか。

 

それでいつも、悩んでしまう、なりきれない。

 

とりあえず寝たふりをして、朝になったらお酒のせいにする。

したたかでつまらない常套手段。

 

思わせぶりな態度をとるのは、はっきりした答えを出さないのは、

駆け引きなんかじゃなくて、自分の気持ちがわからないだけ。

 

全部お酒のせいにして、私の気持ちは大したことないから。

梅昆布茶ダイエットをする。

気持ちがダメになってしまったからせめて痩せたい

 

永遠に書きあがらないんじゃないかと思うレポートがまだ1つある。

泣きながらなんとか書きあげたレポートでさえ、単位に届くか怪しい代物だ。

 

就活と期末レポートの重圧もう毎日酒が止まらない。

酒とタバコで脳をいじめ続けている。

 

昨日も結局終電を逃し、朝まで飲み、始発で帰り

起きたのは夕方。

 

レポートの締め切りが近い。

明日の面接の準備もしなければならない。

 

もうこんな文章を書いている暇はないし、

ぴったんこカンカンを見ている場合ではない。

 

永遠にテレビを見ながらお酒を飲みながら頭を使わずにいたい。

 

やる気が出ない。鬱ではない。

ただのモラトリアムの深みにはまった普通の大学生。

ただのファッションクソメンヘラ大学生。

 

せめて痩せよう、何もないけど、せめて痩せよう。

そしたらいつも何も書くことないESの特技欄、ダイエットって書ける。

痩せて、雰囲気美人にもなりやすくなる。

メンヘラみも増す。

 

何もないから、せめてダイエットする。

 

梅昆布茶ダイエット。

脳を脂肪と糖で満足させるのではなく、旨味で満足させる。

 

目標体重は40キロ。多分、-8キロくらい。怖くて体重計しばらく乗ってない。

 

成績は優!内定は5社以上!痩せて可愛く!

 

なんて思ってない。

 

成績は多分、慈悲の可だし、

内定は泡を吹きながら1社でも獲得できれば万々歳。

痩せたって大して可愛くなれるわけではない。

 

でも痩せるしかもう、自分のなけなしの根性で達成できることがない。

世間は厳しかった。自分の能力を過信していた。

 

せめて痩せよう。

 

明日から

朝:昔買った粉末スムージー

昼:炭水化物少なめ

夜:炭水化物なし 

 

随時、梅昆布茶で空腹を紛らわす。

しかし明日は飲み会。明後日も飲み会。

 

終わってんな!!!!!

人生の暇をつぶすのは私には難しい

人生は暇つぶし。

 

そう思って、枝毛を見つけて切っていたら1時間経った。

そろそろ枝毛も簡単には見つからないし

死ぬほど飽きて死にたい。

 

 

もしこの1時間で、外に出る準備をしていたら

今頃このワンルームを飛び出して

美術館に出かけて

もう3時間は暇をつぶせたのに。

 

 

 

あるいはこの1時間、勉強していたら

世界は広がり、新たな発見があり、

また次の研究題材に心が躍って

もう1週間くらい暇をつぶせたのに。

 

 

もしくはこの1時間、就活をしていたら

自分に合った素敵な企業を見つけ

内定をもらえることになり

もう3年は暇をつぶせたのに。

 

 

コンビニでカップ麺買ってくる。

バリキャリ年上

元カレのネトストから、元カレの今カノ特定して、誤フォローしがち。

 

 

「クリスマスは何してたの?」

 

「あ、後輩と映画見に行きました、独り者同士で...笑」

 

「へえ...男の子?」

 

「え、いや...女の子ですよ〜笑」

 

なぜ嘘をつくのか。

別に言えばいいのに。

やましいこともないし。

その人に気があるわけでもないし。

なぜ嘘をついたんだ?

 

以前飲み会で出会った年上の男性とご飯。

中目黒のもつ鍋。一度来たかったお店。

今日は寒いし、ぴったり。

 

彼は頭が良くて、したたかな人だ。

ゲスいことも話せるあたり、したたかな人だ。

飾りっ気がないのは、自信があるから。

 

話しててすごい楽しいとか、ご飯をおごってくれるとか

そういう利点があるわけではないんだけど

家が近いのもあって、たまに一緒にご飯を食べる。

 

多分そういう、自分の確実な能力と実績を裏付けに

ちゃんと地に足いた自信を持っている人が、周りにはいないから

一緒にいると、自分のふわふわした生き方を見直せて

少し、落ち着くんだ。

 

もつ鍋、お店でちゃんと食べるの初めてかもしれない。

もつの脂が、白菜に沁みて美味しい。

ビールがすすむ。

 

「あ、そういえば、○○社落ちたんですよ」

 

「え、まじで」

 

そう、私は就活真っ最中。

すでに2社落ち。

その1社が、彼の会社。ITベンチャーではそこそこ有名な会社。

 

「いやあ、就活舐めてたのもあるけど、やっぱ○○社難しいっすね」

 

OBの方を紹介してもらったのもあって

一応報告しておかなきゃと思って言ったけど

言葉にするとやっぱり少しつらい。

 

「すぐ決まりそうだけどね」

 

そう言ってくれる人は多いけど

彼に言われるのは一番嬉しいかもしれない。

 

みんな嘘だらけだけど

彼はそこまで簡単に嘘をつかなそうだから。

 

会社の話を少し聞いて、

今は事業が上向いているようで

私も素直に嬉しい。

ウーロンハイがすすむ。

 

彼は若いのに、広告事業のマネージャーをしている。

若手に大役を任せることは、ITベンチャーにはよくあることだけど。

ちゃんと成果を出しているのだからすごい。

 

学生時代はテニスサークルの会長をしながら

自分でインターネット事業をして稼いでいた彼。

 

なんだ。それ。

 

就活で自己分析を散々してきた今

自分に何もないことを知った今

堪える格差。

 

 

 

「お腹大丈夫?シメ、食べれる?」

 

「はい!!」

 

このもつ鍋のスープ。

シメが美味しくなかったら奇跡だ。

 

ご飯を煮て、卵はかき混ぜながら入れて、ふわふわの雑炊。

 

 

 

ああ、なんだかもう、もう、なんでも、どうでもよくなってくる。

 

 

 

彼がすっとおたまをとって、自分の分を取り、

おたまを私の方に渡す。

 

女の子に取り分けてもらおうっていう精神が微塵もないところ。

そういうところ。

 

そして最高に美味しいこの食べ物。

お米と卵ともつ。

地球上の原子たちからこんなに美味しい物質が出来上がる。

突然世界が愛しい。

 

美味しいもの食べながら、美味しいお酒を飲んで

素敵な人たちとお話しながら生きていければそれでいい。

 

 

 

それはとっても贅沢なことだったと気づいて焦る。

今は経済的には両親に甘えて、自分のブランディングも、学歴と見た目によるところが大きい。

これで就活に失敗したら、お金も無くなって、肩書きが私らしくなくなったら。

そもそも私らしさ、なんて。

 

「美味しいね。」

 

「はい、とっても。」

 

今はもう、何でもいいや。

 

 

目黒側沿いを歩いて帰る。

 

「そういえば、クリスマスはどうしてたんですか?」

 

「クリスマスの日に彼女ができてね」

 

「えっ」

 

「2週間で別れた」

 

「駆け込み需要すぎる」

 

「うるさいな」

 

「いやいや、だってさすがに」

 

「君みたいに頭のいい子だったらよかったんだけどね」

 

「いやいやいや...」

 

頭がいいって、褒められるの、高校生ぶりで

お世辞でも全力で照れてしまう。

って、そんなお世辞言う人だったっけ。

 

「どこで知り合ったんですか?」

 

「飲み会だねー。やっぱああいう感じで会うとね、打率は低いよ。」

 

 

彼も飲み会で出会ったし。

どういう気持ちで言っているのか。

 

「レポート、来月には終わるんだっけ?」

 

「そうですね、今月末が締め切りなので」

 

「じゃあ、また来月に飲もう」 

 

 笑顔で頷いて、別れる。

 

ちょっとだけ、さっきの嘘の理由がわかった。